土壌と養水分管理
07/09/10
9.土壌と養水分管理
土壌管理・施肥
ハウス栽培では,受粉や摘果など,栽培管理作業をはじめビニールの展張作業,見回りなど,集約的な管理作業で土壌を踏み固める。冬季に堆肥や土壌改良資材を施して中耕し,固結した土壌を膨軟に改良する必要がある。しかし,チェリモヤは浅根性であるので,全面深耕で無闇に根を切断しないように注意する必要がある。
堆肥は毎年,冬季に10a当たり1トン以上を施す。また,保水や雑草防除を兼ねて稲わらなどを敷き込む。ただし,敷ワラなど,土壌被覆資材のマルチングは地温がやや高まってくる4月以降に行う方がよい。
好適な土壌PHは6.0〜6.5とされており,微酸性〜弱酸性が適しているものと思われる.スペインのチェリモヤ産地では地質の関係から土壌PHは7〜8で,場所によっては鉄欠乏症などがみられ,多収穫をあげている優良園の土壌PHは6〜7であるといわれている。和歌山県でのチェリモヤ園ではPH4の強酸性土壌もみられるが,生育にはとくに障害は見られていないところからみて,土壌PHに対する適応性はかなり広いものとみられる。
チェリモヤは,カルシウムの吸収量が多いので,冬季の中耕前に土壌PHを検定したうえ,PHが高くなり過ぎない程度に苦土石灰などを十分施す。
施肥は,若木のうちは生育状況をみながら発芽前から10月にかけて適宜行なえばよいが,成木の施肥時期は休眠期(12〜2月),果実第1次肥大期前(5〜6月),果実第2次肥大期前(9月)の3回を基準とし,その間必要に応じて適宜追肥を行う。
ハウス栽培での適正な施肥量は明らかにされていないが,和歌山県果樹園芸試験場で礫質壤土の成木園で施肥量試験(緩効性化成肥料10-10-10)が行われており,3年間の結果によるとN,P,Kとも10a当たり10kg区では葉色が淡く,樹勢がやや弱くなっている。20kg,30kg,40kgの各区では生育や果実肥大に差はみられていないことから,この試験園での適量は20〜30kgの範囲にあるのではないかと思われる。
カリフォルニアの資料によると,胸高の幹直径が2.5cmの樹では,化成肥料(8−8−8)で1樹当たり年間500g程度が必要とされ,ネーブルオレンジ,アボカドに準じて行うのがよいとされている。
著者の栽培している15年生樹チェリモヤ園は,元水田で潜在地力が高く毎年、大量の稲藁をマルチしている関係か,樹勢の強い品種では無肥料で10年間栽培している。施肥量については,地力や樹勢によってその適量は異なるので,生育診断や葉分析などによる栄養診断によって加減していく必要がある。
ただ、チェリモヤは結果期に入るとカリを多く吸収するので,チッソと同量くらい施す必要がある。とくに果実肥大期前にはカリの追肥が必要であるが,カリの過剰はマグネシウム欠乏を起こし易いので留意する。
生育期における生育診断には,葉色と葉の大きさ,新梢先端の未展葉芽の色,生育末期ではこのほかに新梢の長さが指標になる。葉の大きさ,新梢長などは,品種や発育枝の勢力,着葉位置によって異なるが,平均的な結果母枝から発生した新梢(結果枝)について,生育指標を示すと第2表の通りである。
第2表 チェリモヤの生育診断指標(成木)
| 診断項目 | 標 準 指 標 | 調査時期,部位 |
| 葉 色 | 暗緑色(10GY-4007)a | 成葉の葉表 |
| 成葉の大きさ | 葉身長20〜25cm,葉身幅13〜15cm | 標準新梢中央部の葉 |
| 新芽の色 | 白銀色 | 生育期 |
| 新梢の長さ | 60〜90cm | 伸長停止後 |
| 新梢の着葉数 | 15〜17枚 | 標準新梢 |
a:園芸植物標準色票による色相番号−色票番号
正常に生育している樹の新梢先端の未展葉芽は,常に白銀色をしており,障害があったりして生育が停滞すると黄褐色〜茶褐色になる。新梢の長さは,若木のうちは遅くまで伸長するのでかなり長いが,樹勢の安定した成木の結果樹では1m程度が標準で,結果量の少ない樹やチッソ過多になると長くなり,節間もまた長くなる。
栄養診断の目安となる葉の無機成分含量の適正値について,チェリモヤでの数値指標はないので,チェリモヤの近縁種であるアテモヤの適正葉内成分含量を参考までに第3表に示しておく。
第3表 アテモヤの適正な葉成分含量
| 成 分 | 適正範囲(乾物中) |
| 炭 素 | 0.3%以下 |
| チッソ | 2.5〜3.0% |
| リ ン | 0.16〜0.2% |
| カ リ | 1.0〜1.5% |
| カルシウム | 0.6〜1.0% |
| マグネシウム | 0.35〜0.5% |
| ナトリウム | 0.02%以下 |
| マンガン | 0〜90ppm |
| 銅 | 10〜20ppm |
| 亜 鉛 | 15〜30ppm |
| 鉄 | 50〜70ppm |
| ホウ素 | 15〜40ppm |
品種:Pinks Mammothの多収穫園
潅 水
1)一回の潅水量
チェリモヤは比較的浅根性であるため,生育期の土壌の乾燥には弱い。とくに夏の生育盛期に乾燥すると葉が黄変して落葉や落果を起こす。生育期には新梢先端の新芽が常に白みを帯びて伸長するようでなければならない。土壌水分を適正に管理するにはテンショメータなど,土壌水分計を設置してそれを目安に行う。
2〜3月にせん定が終われば十分に潅水を行って発芽を促進する。発芽期から収穫が終わるまでは主根域土層(深さ5〜30cm程度)の土壌水分を,pF1.8〜2.7に維持するように潅水する。ただし,1回の潅水適量は園地の圃場容水量と潅水間断日数によって異なり,潅水量が多すぎると,水を根域土層下に浸透させて無駄にするばかりでなく,土壌養分を深層に溶脱させてしまうので注意する必要がある。
1回の適正な潅水量を正確に測定するには詳細な調査が必要で,少々厄介であるが,便宜的には次のような方法で測定,算出するのがよい。
まず,一回潅水量の理論的最大値(I)は,Σ1/10(Fc−Fm)×D(mm)で算出される。
ここで,Iは主根域土層がpF2.7まで乾燥したときの1回最大潅水量(mm)で,Fc
は,園地における圃場容水量相当時の測定土層の含水率(容積%),Fmは主根域土層がpF2.7まで乾燥したときの含水率(容積%)である。
まず測定にあたっては,園地の調査位置に近い場所の主根域土層の中心深さに予めテンショメータを設置してpF測定ができるようにする。次に,土壌の深層まで十分湿るような大量の雨が降った後,または50〜60mmの潅水を行ってから,湿った筵などで被覆して土面蒸発を防ぎ,24時間後の含水率を(24時間容水量)を土層ごとに調べる。含水率の測定は通常,チェリモヤの樹冠外周下で,人間の入れる程度の大きさに,深さ1m位の穴を掘り,土層ごとに100ccの試料円筒を打ち込んで土壌構造を崩さないようにして試料を採取する。生土重量を測ってから予め110℃に調節した乾熱器で24時間乾燥させて乾燥重量を測定し,生土重との差を求めれば24時間容水量(Fc)時の含水率(容積%)である。
同様にして,主根域土層が pF2.7にまで乾燥したときに測定した値がFmで,Dは,それぞれ測定した対象土層の厚さ(cm)である。
こうして測定した土層ごとのFcとFmの差に1/10を乗じた値は,それぞれ土層における減少水分量で,これを測定土層ごとに合計すると主根域土層がpF2.7まで乾燥したときの消費水量であり,pF2.7で潅水する場合の一回に施せる最大水量でもある。また,潅水直後には有効土層全体を圃場容水量(24時間容水量)に戻すことができる水量である。
なお,土層ごとにみて水分の減少が認められる深さを,根群の有無にかかわらず土層の水収支からみた有効土層と呼ぶ。
2)潅水の間断日数
潅水の間断日数,つまり潅水間隔は,さきに示した一回の適正水量を潅水しても,主根域土層がpF2.7にまで乾燥する日数はチェリモヤの生育ステージや天候,温度などで,また敷ワラの有無や草生の繁茂状況など,土壌の表面管理によって異なる。つまり,チェリモヤと草生の蒸散量や土面蒸発など,消費水量の多少によって潅水間隔は違ってくる。だから,適正な水管理はテンショメータを設置して土壌pFの推移をみながら行うようにする。
▼潅水時期の決定にはテンシオメータのPF値を目安に

著者のハウスでは,3〜5月には10日置きくらいに,6〜9月は6〜7日置きに,また10月には10日置き程度に,それぞれ30〜35mm程度の潅水が必要で,これを1日消費水量に換算すると,3〜5月は平均3.0mm,6〜9月は平均5.0〜6.0mm,また10月は平均3.0〜5.0mmである。
理論的な潅水の間断日数(D日)は,1回潅水量(Imm)と日消費水量(ETmm/日)によって決まり,次式のように示すことができる。
即ち,D=I/ET(日)
チェリモヤは比較的根の分布は浅く,主根域土層(主たる根群分布土層)は,深さ5〜30cmである。しかし,一部の根はさらに深く入っており,著者の観察では一般に根域土層は深さ60cm位とみている。干天の続く盛夏季には頻繁に潅水を続けても,数日でpF2.7を超えてくるようなことがある。これは,一回潅水量が適正量よりも少ないからである。このような場合は,時にはたっぷりと畝間潅漑を行うとよい。
11月以降,発芽期までは殆ど潅水の必要はなく,むしろ土壌を乾燥させることによって休眠を促し,耐寒性を増すようである。
地温の低い3〜5月の潅水は晴天日の日中に行うようにして地温の低下を避ける。また,夕方に潅水してハウスを締め切ると夜間に過湿となり,開花の済んだ花弁や若葉に灰色かび病が発生し易い。また,10月以降は過剰な潅水は根腐れを起こすし,過湿は灰色かび病の多発原因となる。
3)潅水法と潅水施設
果樹のハウス栽培における潅水法としては,散水潅漑,地表潅漑が行われる。散水潅漑には,散水ノズルやマイクロスプリンクラ,多孔パイプや散水チューブによる樹下散水が適している。水を地表全面にかけ流す地表全面潅漑や畝間潅漑は特別な施設を要しないが,潅水量の調節が難しく過剰潅水になり易いほか,通路まで泥濘んで管理作業に支障をきたすのでハウス栽培には適当でない。
散水ノズルやマイクロスプリンクラには多くの器種が市販され,実用化されている。それぞれ一長一短があるので,その得失をよく認識して利用する。多孔パイプや散水チューブによる散水やドリップ潅水は低圧で利用できるので,ポンプの揚程が小さく配管経費を安くできるが,目詰まりを起こし易いので,送水管に効果的なストレーナを装備して砂塵を濾過できるようにする。
散水潅漑では,潅水量は散水時間によって調節するが,散水時間は一回潅水量と潅水施設の散水強度から次式によって決まる。即ち,散水時間(T)=潅水量(mm)/散水強度(mm/hr)
ただし,散水強度(mm/hr)は60q/aであるから,(T)=潅水量(mm)/60q/a(hr)と表すことができる。
ここで,Tは1散水ブロックの散水所要時間(hr),qは散水ノズル,またはスプリンクラ1個,あるいは散水チューブ1m当たりの散水量(l/毎分),aは散水ノズル,またはスプリンクラ1個,あるいは散水チューブ1m当たりの散水支配面積(m2)で,散水ノズル,スプリンクラ,または散水チューブの配置間隔(xm×ym)である。
草管理
ハウス栽培では度々潅水するので雑草の生育も早い。稲ワラなどをマルチングして雑草の発生を抑えるようにする。

雑草を生やすと,ハダニやヨトウムシ類の繁殖を助長するので雑草が大きくならないうちに早めに除草する。
チェリモヤに対する除草剤の薬害は明らかにされていないが,根が浅いので土壌処理型や茎葉移行型の除草剤の使用は注意を要する。また,雑草が大きくなってから除草剤を散布したり草刈を行うと,雑草に寄生していたヨトウムシやハダニ類がチェリモヤに移動して思わぬ被害を受けることがあるので注意する。
稲ワラマルチで雑草を防除
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